


マサチューセッツ工科大学からスピンアウトしたLightmatterは、演算に電気ではなく光を使ったチップを開発し、この問題を解決しようとしています。
人工知能(AI)技術が発展するにつれて、AI処理に必要な演算能力や消費電力が飛躍的に増大し、それがAIの発展の壁となる可能性が出てきました。マサチューセッツ工科大学からスピンアウトしたLightmatterは、演算に電気ではなく光を使ったチップを開発し、この問題を解決しようとしています。
NVIDIAのチップよりも最大10倍高速
従来のコンピューター用のチップは、電子の流れをトランジスターによって制御することで演算を行います。これに対してLightmatterのチップは演算に光を使うことが特徴です。
光を使うことによる利点は2つあります。1つは光のほうが電気よりも、異なる波長の光を使って、データをより効率的にエンコードできる点です。また、必要な電力も光のほうが少ないといいます。
このため、Lightmatterの光チップは、NVIDIAの最上位クラスのAIチップである「A100」に比べて1.5倍から~10倍ほど高速に処理を行うことが可能だそうです。消費電力も、Googleの自然言語処理モデルである「BERT」を動作させる場合は、5倍高速であるにもかかわらず、6分の1の電力で済みます。
演算精度の問題も
Lightmatterによると、AI技術の発展は数年以内に壁に突き当たるそうです。これは、コストと電力消費量の増大、そして技術的な制約が見えつつあるためだといいます。
非営利のAI研究団体であるOpenAIによると、画期的なAI研究に必要な計算処理能力の総量は3,4カ月ごとに倍増しており、2012年から2018年の間に30万倍にまで増加したそうです。
また、大量の電力を消費するAIアルゴリズムが広く使われることで、環境への影響を懸念する声もあります。
光で動作するAIチップはこのような問題を解決し、AI発展のためのブレークスルーとなるかもしれません。